つるつるの手帖

なにかおもしろいことないかなー

モバイルルーターを契約してしまった……そこから、解約にこぎつけるまでの顛末

機種変更して新しいiPhoneにするために、携帯電話ショップに行きました

先日、機種変更のために訪れた携帯電話ショップで、◯o◯◯◯◯Wi-Fiという、性能も売り方も非常に評判の悪い商品(モバイルルーター)を、一度は携帯(iPhone)との抱き合わせで契約してしまいました。

しかし機器引取りの際に再度交渉したことで、契約を帳消しにし、通常の機種変更の手続きとしてやり直すことができました。
私自身、今回の経験から学ぶことも多かったですし、同様の経験(被害というと語弊があるので)にあわれた方の参考になればと、ことの顛末を記録しておきます。


以下長文となりますので、全体をナナメ読みしていただければと思いますが、結論を要約すると、
やってしまったことを後悔したら、なるべく早いうちに、毅然とした態度で正面から当たろう。 ……です。当たり前のことですが。


ちなみに、私は特に人が良さそうにみえるタイプではありません(ちなみに顔もややコワモテかも)
また契約や技術に関する、必要最低限の知識も持ちあわせているつもりです。専門家ではありませんが、Wi-Fiの基礎的な知識や携帯電話の通信回線との使い分けも理解しています。
今まで人に騙された記憶はないし、家族や友人からも物事には特に慎重にあたるタイプだと思われています。


……しかし今回は、ついついサインしてしまいました。
私に対応したのは、非常に頭の良い、弁の立つ店員でした。もらった名刺の肩書きは、店長となっていました。客の挙動を観察する能力に優れ、営業トークが巧みでした。さらに、自分はしっかりしたタイプだと思っていた私自身の慢心が、それに拍車を掛けてしまったようです。

なお解約のやりとりまでが、今にして思えば、ショップにとっては想定した範囲内の手順だったようにも思えるのですが、最終的には気持よく解約できましたので、店舗名や担当者名、時間軸に沿った具体的なやり取りなどの記述はできるだけ避けたつもりです(冒頭から、どこのキャリアの話なのかはバレバレですが)

世の中には特に詐欺的なものではなくても、売り手と買い手との間にあるギャップ(需給アンバランス、情報・時間・商品知識の差)に目をつけたビジネスが数多くあります。
ただ今回の一件を通して、携帯キャリア自らが、そのギャップを作為的に生み出しているところがあるようにも思えたので、それについても最後に書きます。

◯o◯◯◯◯Wi-Fi

モバイルルータの契約にまつわるトラブルは、ネットで検索すると数多く見つかります。「詐欺的な販売方法」だとの意見がある一方、質問サイトなどをのぞいてみると「自己責任」との理由から、契約してしまった質問者が、複数の回答者から叱責されている例にも当たります。
私自身は、今回わたしの身に起こったことから考えると、必ずしも無知だったから引っかかってしまった訳ではないように思います。
店員との細かなやりとりを思い返してみると、非常に計算された営業の型があるように感じました。月々の利用料金の説明から心理的な揺さぶりなどを経て、他の関係ないモノの契約へと巧みに誘導するという、例えば貴金属や絵画販売などの悪質商法に近い営業スタイルであるようにも感じられます。


それでもなお、やっぱりあんたのケースだって自己責任だよ、お店のせいにしちゃいかんよ、という見方もあるでしょう。
ただ、やりとりの中で自宅にWi-Fi環境があることは伝えてあり、さらに(テザリング可能な)iPhoneを契約しようとしている私に「モバイルルーター」がほぼ必要ないことは、店員にも分かっていたはずです。自宅で契約しているプロバイダは同系列の業者ですし、携帯電話もずっと同じキャリアです。店員が見ている店頭の端末画面には、私の過去からの長い契約の記録が見えていたと思います。
それでもなお、そのような客に必要ない機器の契約を勧めたということは、その会社の言うオススメとは、どちらの方向を向いて言っている言葉なのでしょう。

同じ環境であっても、モバイルルーターを必要とする人もいると思いますが、その場合はルーターの契約のために店を訪れるはずです。
今回私がショップを訪れたのは「機種変更」のためですから、途中から話がモバイルルーターの契約に変わってしまったのは、やっぱり店側の誘導のような気がしてなりません。


はじめに、ややインパクトのあるジャブを繰り出され、相手のペースにハマってしまった

機種変更の話は、まず月々の利用料金の説明から始まりました。
家族もすべて同じキャリアで契約している私の契約は、無料通話の部分が大きいため、基本料金とフラット定額の合計で収まる月がほとんどです。
今回のiPhone機種変更で通信回線が3Gから4G/LTEに切り替わるため、フラット定額の部分が値上がりすることは事前に知っていました。ただ、細かく料金を調べてからショップを訪れたわけではありませんでしたので、おおよそでしか把握していませんでした。

電卓を叩いた店員の説明では、機種変更後の月々の料金は、11,000円を超えるとのことでした。
一瞬「え?」と思いましたが、事前に調べてきたわけではなかったため、何かの間違いだろう、後で細かく算出すれば、当然それを下回る金額になるはずだ、とも思いました。
後で分かりましたが、この提示された金額にはカラクリがあります。端末代金の割引きなど、適応されるべき割引がいくつか含まれていないのです。
また、これが20,000円と言われれば、すぐに「高いです。何か違いませんか?」と話を引き戻すことができたと思うのですが、微妙な金額であったため、まずはその後の話を聞いてからにしようと、相手に話しをさせてしまったことが、後に間違いを生む原因となりました。


店員によるここからの話は、機種変更ではなく、説明のないままモバイルルーター契約の説明にすり替わっているのですが、その場の私は、それにまったく気付くことができませんでした。そのまま機種変更の話が続いている感覚でした。

「月々の料金を抑えることができるので、他のお客様にもこのような◯o◯◯◯◯Wi-Fiと抱き合わせでの契約を紹介しております」というような説明でしたので、機器が必要ないことがわかっていても、安くするための選択肢としては、それが唯一の方法だとその時点で思い込んでしまったのです。
同時に契約すると、1,000円ほど安くなるという話でした(それでも後で契約し直した通常の料金よりも高いのですが、なぜこのとき疑問に思わなかったのか自分でも不思議です。「高くなってしまった料金をできるだけ安く」という目標を、窓口の担当者と共有しているような感覚になってしまっていました)


ここでさらに私は、間違いを犯します。この時点ではまだ、店員による誘導であった抱き合わせ販売を、自分の選択でそうしたかのように思い込んでしまうような判断をします。
つまり、iPhoneのフラット定額と、モバイルルーターのフラット定額が重複していることに気がついたため、iPhoneの方のパケット通信を従量制にするという、後から考えればしなくても良い提案を「つい」してしまいました。
ルーターを常に持ち歩き、iPhoneのモバイルデータ通信を切って、パケット通信の部分は常にWi-Fiを使えば、さらに料金が下げられることに気がついたのです。以前、iPhoneが3G回線対応のみだった時には、高速回線を必要とするヘビーユーザーを中心に、こういう使い方をする人もいました。

再度このプランで計算してもらうと、現在の金額を下回る料金が出てきました。
この時点で「あれ?今までより料金は下がるのに、さらにモバイルルーターが持てるのなら、これはこれでいいのかも知れない」と思ってしまったのです。その後の細かな契約の話を聞いている間中、常に両方を持ち歩くことやルーターの電池持ちなど、2台持ちすることのメリットとデメリットが頭の中で交錯していました。

最終的には自分でも納得し、(正確には納得した気になり)細かな文字で様々な契約の条件が書かれた用紙を「何度も」読むことを促され、最後に「ここから先はキャンセルできません」と書かれた部分にもチェックした後、用紙にサインして契約が完了しました。
オンラインで行う契約が終わる数時間後、新しいiPhoneモバイルルーターを引取りに再度来店する約束をして、ショップを出ました(引取りは、当日でなくとも構わないとのことでした)


引取に行く前に、改めて料金を調べてみた

引取りの約束をして店を出たものの、それからもずっと落ち着かない気分は続きました。いくら料金が安くなると言っても、明らかに必要のないものを持たなくてはならないことが、感覚的にどうしても理解できなかったのです。

結局その日は外せない用が出来てしまったので、モヤモヤを抱えたまま丸一日を過ごし、翌日引取りに行くことにしました。
引取りに行く前に、今さらながら料金を調べてみようと思い、ソフトバンクのトップページからiPhoneの機種変更へのリンクをたどってみると、すぐに一般的な料金が提示された表に辿りつけました。
……なんとそこには、7,000円代の料金が提示されているではありませんか。ただ、小さな文字で色々と条件のようなものが書いてあるため、それが自分に適用される金額なのかは、はっきりしません。しかし、店頭で提示された11,000円とはずいぶん開きがありましたし、私の契約自体も特に変わったケースには思えませんでしたので、やっぱり何かおかしいと思いました。

ここで心配になったのは、昨日自分がサインした書類が、どのような名称で、法的にどこまでの拘束力があるのかがはっきりしなかったことです。サインの前には十分に確認したつもりですが、あのような契約書は、顧客に理解させないように作成されているとしか思えないほど難解であるため、途中からは目で追うだけでした。ただ最後の方に、契約を破棄できないとの一文が書かれていた気がします。

先に書いたように私は、人に騙されたことはありませんが、他人に気を使いすぎるきらいがあります。何か企みがある人間からは、お人好しに見えるのかも知れません。思い返せば、オンラインの端末を使いながら「契約の順番待ちには時間がかかるんですよ」と話す担当者を見ていて、なんだか自分が手間をかけさせている気分にもなりました。あの手間をかけさせた時間をくつがえしてしまう事に、多少の躊躇はありましたが、それにしても、こちらが甘んじて受け入れるべき契約ではありません。

そこで、担当者に「悪いなぁ」と思ってしまう気持ちを押さえつけ、引取りの際に契約の破棄を目的とすることと、相手が「キャンセルできない」と言う前にすべてをやり直させる必要があると考え、次の3点を整理した上で、再度ショップに向かうことにしました。


解約させるために、心がけた3つの点
  1. 最初から、はっきりとクレームであるという態度で望みました。できるだけ紳士的に振舞い、声のトーンは抑えたつもりでしたが、それでも通常の引取りに来た態度とは違っていたはずです。窓口の人間に「ただごとではない、直ぐに対応しなければ」と思ってもらうために、これは必要な手順だったと思います。
  2. キャンセルに関しては、通常の手順以外の判断が必要になると思ったので、最初から権限のある人間と話しができるように、窓口で指名しました。通常、引取りの場合はその場に居合わせた者が対応しているようでしたが、誰でも良いからと捕まえた場合、「私にその判断はできません」という答が返ってくる可能性があります。前回の担当者が、たまたま店長であった事と、名刺を貰っておいたことが良かったと思います。
  3. きちんと料金の説明がされないまま機種変更からモバイルルーターの契約に移ったことは明らかでしたので、割引等をWebで調べ、なぜ割引の説明がないまま高い金額を提示したのか、という切り口で話を進めました。最初の訪問の際、担当者はメモに金額を並べながら私に説明をしたはずなのですが、その時のメモの提示を求めたところ「破棄してしまった」とのことでした。再度、はじめから料金の計算を依頼したところ、割引を織り込んで算出された金額は、やはり最初の金額よりも安くなっていました。


……などと、書き連ねたものの、実際は最初に話を切り出した時点で、驚くほど早くこちらの希望通りの対応がなされました。
その際、店長が強調したのは次の2点。

  1. 通常の契約はオンライン上で終わってしまっているので、普通は解約できない。ただ今回の場合、説明が不足した部分があったことと、引取りの際に行う本契約前であるため、速やかに解約の手続きをさせてもらう。その際に必要となる経費等は、一切発生しない。
  2. この後、引取りのためにもう一度来店してもらう必要があるが、これ以上ご足労願うのも申し訳ない。通常は一ヶ月後でないとできない(iPhoneの契約に付随する)コンテンツ情報料などの解約も、この場で行わせてもらう。


たぶんこういうクレームは、よくある事案なのでしょう。
というよりも、そもそも最初から、多くの顧客にチンプンカンプンな説明をしたあと必要のないものを契約させ、クレームを入れてきた客のみを解約する、というやり方で成り立っているビジネスなのでしょうか。
iPhoneの機種変更にくっついてくる「解約が必要なコンテンツ情報料」というのも、意味が分からない。これも解約を忘れた客から料金を搾取する罠として以外の目的があるのか?なぜこんなトラップを仕掛けておくのか、それが顧客の利益にどうつながるのか、まったく理解できない。最初から解約を前提とした契約を顧客にさせるなど、押し売りの新聞勧誘員まがいの荒唐無稽さだと思います。

2つ目の、再来店いただくのは申し訳ない、という口上も、こうしたクレームをつける客を再来店させないための工夫でしょう。事実、隣のブースで機種変更の話をしていた客が、私と店側とのやりとりを聞いて、怪訝そうな顔をしていました。

こうして、やりとりにエネルギーは使いましたが、最終的にはこちらの要求通り、無事モバイルルーターの解約ができました。
ただ私の場合、まだ引取りのタイミングだったことで、解約が容易だったのだと思います。機器を引き取る際、再び書類にサインをするのですが、サインをして品物を受け取った後では、要求をすべて通すのは難しかった可能性はあります。


結局、月々の料金はいくらになったのか

機種変更した最初の月は、手数料やら、先のコンテンツ情報料などの料金やらが盛り込まれているので、引き落とされる金額が多くなります。また、各種割引きなどは、開始月がずれる事があります。
現時点でそれらすべてが適用された形での請求が挙がっておらず、具体的にいくらになったのか、という部分には未確定な部分があるため伏せておきますが、8,000円を超えたあたりでしょう。

※ 最終的にいくらになったか、2013年12月14日に追加記事を書きました。こちらのエントリーを参照してください。

結局、携帯電話会社はどちらの方向を向いているのか

7,000円代前半というウェブサイトに提示されていた金額は、あくまでも目安です。携帯電話会社は様々なキャンペーンを行うことで、すべてのユーザーの月々の料金に差がつくようにします。単純な横ならびの比較ができないようにする訳です。
販売する商品を分かりにくくして、顧客の視点に立っているようにみせつつ、本当に売りたい商品を販売する、というのは、契約が伴う商品によくあります。携帯電話会社に限らず、生命保険などもそうでしょう。儲かるビジネスの王道のような気もします。

携帯キャリアの場合、例えば割引きに期間を設けたり、その期間を25ヶ月などという中途半端な期間にしたり、また同系列の業者とプロバイダ契約をしているか否かで、受けられる割引きにも差をつけます。また、ある割引きを受けるとこちらは受けられなくなる、というような組み合わせを用いて、契約者ごとの請求金額を、原型をとどめないほどにバラバラにします。

これは、例えばウインナーソーセージや、ミシンの販売方法に似ています。数ある商品がカニバってしまわないようにするなど、理由はあると思いますが、数や機能にあえて差をつけることで、単純比較ができないようにすることがその目的です。
これらは、顧客の方を向いていないビジネスと言えませんか?これらの中に、現在も発展を続けている商品を見つけられるでしょうか?

いずれにせよ、顧客の方を向いていないビジネスが、発展し続けることは考えられない。今回は、特定のキャリアの話をしましたが、どの携帯電話会社も似たような話は聞きます。


ねぇ、◯さん、ブロードバンドの普及のときも、iPhoneを販売し始めたときも、最初にものすごくお得なプランを提示してユーザーの裾野を拡げ、その後本当にやりたかった方へと誘導していくようなあなたのやり方、ビジネスにおける一つの有効な方法だとは思いますが、最近ちょっとあからさま過ぎやしませんかねぇ……。
僕は、今すぐにはキャリアを乗り換えたりしませんが、いずれ考え直さないといけない時期がくるような気がし始めましたよ……。


しかし今になっても、考えれば考えるほど、LTEに対応したiPhoneを持っている人に、モバイルルーターを売り込むって神経が信じられない……。